「プロは寝ている間にも強くなる」
そんな言葉があります。
もちろん、
何もせず寝ているだけで、
将棋が強くなったり、
トレードが上手くなったり
するわけではありません。
その前に、
徹底的に考える。
失敗する。
なぜ失敗したのか悩む。
その状態で一日を終えると、
翌日になって、
それまで見えなかったものが見える
ことがあります。
私は、こういう現象も含めて、
「寝ていても強くなる」
ということなのではないかと思っています。
目標が違えば、上達の方法も変わる
将棋なら、
・初段を目指すのか、
・県代表クラスを目指すのか
・プロレベルを目指すのか
トレードなら、
・月に数万円でよいのか
・会社員の給料程度を安定して稼ぎたいのか
・億り人を目指すのか
目標によって必要な勉強は
変わります。
登山で例えるなら、
・ハイキング
・富士山登頂
・エベレスト登頂
どこに行きたいかで、必要な知識も装備もまったく違います。
目標が変われば、
努力の量だけでなく、
努力の方法そのものが変わる。
将棋でも、初段を目指すレベルなら
「定跡を覚える」
「手筋を覚える」
「単手数の詰め将棋を解く」
というアプローチでも、
プロを目指すなら
「定跡がなぜこの手なのか、深く読み込む」
「大局観を理解する」
「将棋無双・将棋図巧といった難しい詰将棋に挑む」
といったアプローチが必要になります。
そして、
今回の「寝ていて強くなる」について、
登山でいうところのハイキングや
将棋でいう初段を目指すような、
そんなレベルよりも、
より高い目標を叶えたいときに
必要になってくるものだと
私は思います。
解けなかった問題が、翌朝突然解ける
寝ることで成長していたとしても、
それを翌朝実感する、みたいな
ことは、ないでしょう。
ただ、似た経験はあります。
詰将棋や「次の一手」の難問を、
どうしても解けないまま寝る。
ところが翌日、同じ問題を見ると、
「あっ、ここかも」
と突然ひらめく。
これをそのまま
「強くなった」
と呼ぶのは違います。
しかし、
前日に考えたものが
頭の中で整理され、
翌日その結果が出力された
というプロセスそのものは
「寝ていて強くなる」と
共通する部分があると思います。
熱海の大会で感じた「一晩で一枚強くなる」感覚
私には、もう一つ
印象深い経験があります。
将棋の県代表として
熱海に遠征したときです。
大会は
S級、A級、B級、C級の4ランクで、
団体戦を戦います。
私はA級代表でした。
S級は四段以上の強豪です。
熱海へ向かう電車の中や、
ホテルに着いてからも、
私はS級代表の人と
何局も将棋を指しました。
ほとんど勝てませんでした。
しかし、
局面を見る感覚や考え方が
非常に勉強になりました。
そして一晩寝て、
翌日の本戦。
私は全勝することができました。
団体戦なのでチームとしては
優勝できませんでしたが、
自分としては非常に良い成績でした。
もちろん、
「前日の対局を睡眠中に脳が処理したから全勝した」
と証明できるわけではありません。
実力、調子、相手との相性など、
さまざまな要因があります。
それでも、
前日に四段以上の強い人と
何局も指し、
その感覚に触れた。
そして一晩寝た。
その間に頭の中で
何かが整理され、
翌朝には、
駒一枚分くらい
強くなっていたのではないか。
振り返ると、
そんなふうに思えるんです。
原田泰夫八段も「寝ているときでも強くなれる」と書いている
原田泰夫八段の
『三手読んで一手打て』
山手書房、昭和55年
85~88ページに、
「寝ているときでも強くなれる」
という小見出しがあります。
そこで書かれていることは、
奨励会に入るほど将棋に没頭すると、
夢の中にまで盤面や駒が現れ、
負けた将棋を夢の中でも考えるようになる。
そうした日々を送っていると、
ある時突然、
それまでとは局面の見え方が変わり、
読み方、大局観、形勢判断、決断、
勝負どころの感覚などが
一段上がる。
一つの壁を越えると、
また次の壁が現れ、
さらに研究する・・・
私はこれを読んで、
「こういう感覚は昔からあったのだ」
と思いました。
科学的にも「寝ている間の学習」はあり得る
現在の睡眠研究では、
起きている間に得た記憶が、
その後の睡眠によって
整理・定着していくことが
知られています。
学習直後の記憶は
まだ不安定で、
それが時間や睡眠を経て
安定していく。
いわゆる
「記憶の固定化(memory consolidation)」です。
技能学習でも、
睡眠が学習内容の定着に関係する
可能性が研究されています。
ただし、
「寝れば寝るほど能力が上がる」
という単純な話ではありません。
研究によっては、
睡眠が能力を上乗せするというより、
起きている間に学習したものを安定させる
役割が重要だと考えられています。
つまり、
寝る前に何を考え、
どれだけ試行錯誤したかが
重要なのです。
学習は梅酒のように熟成する
以前、この現象を、
梅酒が時間の中でゆっくり熟成するようなもの
と言われた人もいました。
材料を入れた瞬間に
梅酒が完成するわけではありません。
勉強も似ています。
知識を入れる。
実際にやってみる。
失敗する。
悩む。
そこまでが
「材料を入れる作業」。
そこから少し時間を置く。
寝る。
翌日もう一度考える。
すると、
それまでバラバラだった知識が
つながることがあります。
上達には、
「勉強している時間」
だけでなく、
「熟成させる時間」
も必要なのではないか。
私はそう考えています。
FXでも「考え抜いて寝る」時期が一番成長した
FXでも似た経験があります。
リアルタイムのチャートをにらんで考え、
Virtual-Tradeで練習を繰り返すうちに、
徐々に勝てるようになっていきましたが、
今回のテーマに一番近いのは、
実際にポジションを持ったまま夜を迎えていた頃
です。
夜、寝る前の23時ごろ。
一晩超えると、どう動くかわからない。
大きく動くことも少なくないから・・
・ここで手仕舞いしておくか?
・このまま持ち越すか?
リアルなお金が動いているので、
簡単には決められません。
悩んで、悩んで、
一つの結論を出して寝る。
ポジションを持ち越したときは、
夢の中で
「相場が急変し、大損した」
ショックを受けた状態で目が覚める、
なんてこともありました。
そんなときは、
朝、チャートを開くのがこわい。
・大声で「えーっ!」って叫ぶかもしれない
・怒りでマウスを壁に投げつけるかもしれない(ありません笑)
のほほんと良い結果を期待して開くと
結果が悪かったときのショックが大きいので、
常に最悪の結果を予想した状態で
チャートを開いていました。
振り返ると、
あの頃が、トレーダーとして
最も成長していた時期の一つだった
ように思います。
それは、
自分で実感したわけではなく、
ただそのころから、
徐々に勝てるようになってきたから、
振り返ってみて、
そうだったのかなと
思うだけではありますが。
チャートの悩みを寝る時間に持ち込んでいた、
そのため夢の中までチャートがでてきた。
自分では気付いてなかったけど
その状態が一番、
寝ている間も実力を上げることに役立つ
最も効率の良い状態だったのかもしれない。
もっと早く気付きたかった。
練習だけでは得られない「本番の濃さ」がある
Virtual-Tradeのような練習は
非常に重要です。
ただ、
本番には
練習にはない緊張感
があります。
実際のお金が動き、
自分で決断しなければならない。
自分の判断の根拠を
真剣に考えるようになります。
だから私は、
練習だけよりも、
実戦を経験することで、
学習密度が高くなる
と思っています。
もちろん、
「大きなお金を賭けたほうがよい」
という意味ではありません。
リスクを小さく抑えながら、
「これは自分の判断だ」
と真剣に向き合うこと
が重要です。
その緊張感が、
夜に持ち越されたとき、
寝ている間に熟成される。
これは、
デモや練習では起きない現象
のような気がします。
「寝ていても強くなる人」は、起きている間に考えている
将棋もFXも、
知識を覚えるだけでは
強くなれません。
実際の局面を経験する。
にらんで考える。
判断する。
失敗を反省する。
結果が良くても振り返る。
その蓄積があるレベルを超えたとき、
「以前とは見え方が違う」
という瞬間が訪れるでしょう。
起きている間に、
頭がいっぱいになるほど考えた人には、
寝ている間にも
整理する材料がある。
・詰将棋が解けない。
・強い相手に何度も負ける。
・ポジションを持って、手仕舞いするか悩む。
その答えが出ないまま寝る。
そして翌朝、
もう一度考える。
それを何度も何度も
繰り返したあとで、
「あの頃とは見えている世界が違う」
と気づく。
それが、
寝ている間にも強くなっていた
ということなのかもしれません。
プロは寝ている間に強くなる。
というけど、
寝ている間に強くなれるくらいに、
起きている間に考えている。
とも言えるでしょう。