三手の読みと捨て駒の妙味

かなり昔に購入した原田泰夫八段の三手の読みに関する本が、いま手元にあります。懐かしい本なのですが、三手の読み、当たり前すぎて忘れていたことです。改めて読み返してみたら、大切なことを思い出したような気がします。古い時代の本ですが、今でも通じる貴重な「三手」ですね。
以下抜粋。

三手の読みとは、こうする-こうくる-そこでこう指す,と三手先を考えて次の一手を指すことである。三手の読みの急所は、二手目の相手の手を、相手の立場にたって最善手を読むこと。相手の最善手は自分が困る手、不都合な手がほとんどである。その手に対する手、つまり三手目を決めて次の一手を指すことである。「読み」とは先を読むこと、先を考えることであり、もう一つは相手の心を読むことである。相手が何を考え、どうしたいと思っているかを推測して、のち自分はこう指すと、三手先を考えて次の一手を指す、三手一組で考えることが考え方の基礎である。

わかりやすい三手の例(詰将棋)を2題

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この2題の問題の初手は、いずれも捨て駒である。詰将棋では、このように捨てる手が多く出てくる。いっぱい持ち駒がある問題では、次から次へと捨てていって、最後に詰ますというような作品になっている。これは、詰将棋という「作品」だからできることで、実践ではなかなかそうは行かない。平等な対局では、互角からスタートして、序盤ではとくに駒の損得が形成に影響するため、駒を損しないことに注意して進めるものだ。しかし、均衡を破るときは、捨て駒がでてくることが多い。駒を取られてはいけない,損しちゃいけないなどと考えては勝てない。捨てる手、最善の犠牲手順、それが名手、妙手といわれ、詰将棋でも指し将棋でも妙味である。せっかく捨てても、相手がソッポを向いて、振り向いてもくれないような捨て方では、ムダ捨てになってしまう。相手が、必ずなんらかの対応をしなくてはならない、必然性をもった捨て方、しかも、相手にとって
もっとも困る場所に捨てる、その2点にこそ、捨て方の才能が問われている。
「肉を切らせて骨を断つ」
自分にとっても、大きな損失を覚悟しなくてはならない。自分の損を極力おさえ、自分の得ばかりを求めて第一手を不用意に打ったために、相手に反撃され、もっと多くの損失となり、犠牲をはらう・・・。そうした読みの誤りをしないために、正しく三手を読むことが大切。