ヒカルの碁・面白いだけでなく勝負の厳しさもしっかり伝わる名作

囲碁・将棋をマンガ化した本について。

私が知るなかで一番古いものは「5五の龍」という厚み5cmくらいの分厚い本で上下巻。時代が古いこともあり、画風も時代背景も古い感じが否めません。しかし、奨励会の厳しい世界を如実に現しており(自分に負けて自殺した子もでてくるくらい!)、奨励会の(将棋のプロになる)厳しさをひしひしと感じる本です。

「月下の棋士」も全巻大人買いしました。これは成人向けの本で、独特の大人の世界が描かれたものです。「5五の龍」が奨励会(プロになる前)の厳しさを描いたのに対し、こっちはプロになってからの世界で、ざっくりいえばプロ棋士になるような人間は一般人とは異なる、つまり変人ばかりいる、彼らの特殊な世界観を描いた-というものですが、アダルト向け漫画という印象が強く、個人的にはあまりオススメしません。

一押しは「ヒカルの碁」です。
大ブームになったことがあるようですが、実は私はそのころ全く知らず、ブームが過ぎただいぶ後になって、たまたまなんとなく全巻大人買いしたものでした。しかし、読んですごくファンになりました。囲碁を知らない人が読んでも面白いファンタジーがあり、それでいて碁界のプロになるための厳しさもちゃんとしっかり伝わってきます。また、苦楽を共にした佐為との別れと・・・涙を呼ぶ感動もありました。

「ヒカルの碁」10巻、プロ試験のリーグ線を戦う主人公のヒカル。
「今日の対戦相手には余裕で勝てるね?」との投げかけに
「全然!」「優勢でも勝ちをアセるとミスがでるし・・・プロ試験だからなァなかなか普通に打てねェよ。”負けるもんか”とか”負けたくない”とかって気合いが入りすぎるのも手が乱れたりするしさァ、心って難しいな」
なぜか印象に残っているシーンです。
正直、盤面に集中すればそんなこと思うヒマもないはずだから、個人的には違和感がありました。でも今の自分には参考になります。囲碁や将棋は、対局中に集中すれば良いのですが、FX(為替トレード)は日常が勝負です。スキャルピングなら集中する時間帯を決めることができるかもしれません。しかしスイングトレードだと日常のどこかに絶好のタイミングがやってくるかもしれず、そのときにうまく集中できるか、また心が平静でいられるか、日常生活の平常心が思う以上に影響する世界です。心の制御が大切だと多くのトレーダーの方が言われますが、ヒカルはこの年(中学生)でそこ(心の制御の難しさ)に気づいていたのです。

蛇足ですが、「ヒカルの碁」がジャンプ・コミックスだったことは以外でした。これだけの勝負感を見事に表現した作品が、あのジャンプからだったとは!少年ジャンプの愛読者でしたが、大人になって読まなくなったあとにこんな作品が出ていたとは・・・ジャンプ、すごっ。