干し柿の作り方

干し柿の作り方を説明します。干し柿は10月中旬頃から収穫し、年末にかけて加工(皮剥き~乾燥)します。しかし、収穫前の3月~10月までも意外と手がかかっています。ここでは、収穫前にどんな作業があるのかも含めて概要を説明していきます。なお、地方によっては「道の駅」などで干し柿製造用の渋柿も販売されているので、それを購入して加工してみる場合には、ヘタ取り工程からで大丈夫です。

肥料散布
【時期:前年11月~4月】
時期の範囲は広いようで実質は狭い。
11月~12月は(前年の)加工時期,1月~2月は積雪があるため、実質可能なのは3月~4月になる。

剪定
【時期:3月~4月】
以下の目的で枝を切除する。
1)隣り合う樹の枝同士がぶつからないようにする。
2)高所作業は危険なため全長を低く保つ。
3)主となる枝に日陰を作らないようにする。
4)薬がかかりやすいようにする(重複をさける,中央部は切る)。
5)草刈りなどの通路の邪魔になる低い枝は切除する。
切除した枝は畑から除去する必要があるので、全て拾い集めて処分する。
この処分の方法は、以前は集めて燃やしていたが、野焼き禁止となったため、
チッパ-等で粉砕するか業者に引き取ってもらう(有料)のいずれかとなる。

新芽取り
【時期:4月~5月】
新しい芽が出てくるが、生かしたい芽以外を排除する。
成長して枝になる前(緑色)の状態で切除するほうが楽であるため、このタイミングで行う。

摘花
【時期:7月頃】
30~35葉に1果になるよう摘花する。
変形花、キズ果など、成熟しても問題になりそうなものは見つけ次第摘花除去する。

農薬散布
【時期:3月~10月】

草刈り
【時期:5月~9月】
月1回くらいの頻度で行う。

干し柿の加工
【時期:10月中旬~12月末】
工程の概要を以下の図に示します。

各手順の詳細について記述します。
<収穫>
適度にオレンジ色になったものを収穫します。
「あんぽ柿」を生産するときは若干青みかかったものを収穫します。といっても青い柿はダメです。全体的にうすいオレンジ色で、へたの付近は緑色っぽくても良い、というレベルです。
「干し柿」にする柿はしっかり熟したものを使います。といっても熟し過ぎると先端部から柔らか過ぎる状態になるので、押しても凹まない固さを保ちながらの熟度です。注意すべき点は、柿の色は先端部とヘタ部では色が異なるので、下から見て赤い(オレンジ色)と思っても、収穫した後にへた部をみると青い(緑色っぽい)ということが多々あります。収穫する人は上からもしっかり色を確認して選んでいます。
収穫は柿に枝が残るように収穫します。小枝に対して根元に向かって引きちぎるように取るとうまく獲れます。
<枝切り>
枝が短すぎると後から紐で縛れません。長くても次工程で邪魔になるので、ヘタの凹み部外周と同等程度の長さに切断するのが良いです。
私のところでは、この工程で不良果の選別も行っています。
<ヘタ取り>
ヘタ部を葉を取り除きます。
<皮剥き>
皮を剥きます。皮は薄く剥く方が良いですが、薄すぎで薄皮が残るのはダメです。また、乾燥後の表面状態を良くするためには、表面が滑らかな状態になるような剥き方が良いです。
<吊し>
地方によって吊し方はことなりますが、私のところでは、2個ペアで枝部を紐でしばり、上図のように竹竿に掛けます。周辺の生産者は、専用台車(上図)を使用しており、1台あたり30~35本の竹竿を並べています。その後の乾燥工程はこの台車単位で移動して行います。
<硫黄蒸し>
皮を剥いた後、表面皮膜ができる前に硫黄蒸しします。この工程の目的は、除菌(カビの発生防止)と酸化(黒色変色)防止です。

乾燥
【時期:10月中旬~12月末】
加熱と休乾を繰り返しながら、徐々に内部の水分を飛ばしていきます。皮剥き後の重量に対して、あんぽ柿で約35%,干し柿で約30%の重量まで乾燥させます。
<あんぽ柿>
予備乾燥(初期重量に対して45%ほどまで)
 30℃ 40~60%RH で48~72時間
仕上げ乾燥(遠赤外線で初期重量に対して35%ほどまで)
 30℃ 48~72時間
乾燥後すぐに脱酸素密封する。
<干し柿>
予備乾燥(初期重量に対して45%ほどまで)
 30℃ 40~60%RH で72時間ほど
仕上げ乾燥(初期重量に対して30%ほどまで)
 25~30℃ 48~90時間
 ・乾燥は4~12時間単位で分割して行う。
 ・休乾をはさみながら行う。
  休乾時、周囲温度が15℃を越えるとカビが発生し易いので、
  気温が高くなるようなら扇風機などで風通しを良くする。
 ・初期重量に対して50%ほどのときに「手もみ」を行う。
  (内部にたまった水分を全体に広げるため)
 ・最終乾燥の手前で2回目の「手もみ」を行う。
  (ここでの手もみは形を整えるための)
具体的な乾燥例については、MTシステムの解析事例で紹介します。

あんぽ柿は、乾燥機に入れておけば正しく製造できます。干し柿は乾燥具合の管理が大切で、決まった時間を乾燥し決まった時間を休乾すればそれで良いというわけにはいきません。大切なのは柿の表面状態を常に管理すること。その具合に応じて乾燥条件を調整する必要があります。このようなややこしい管理が必要になる理由は、柿の成長過程における気温変化による内部水分量の差,休乾時の周囲温度・湿度差などで、地球環境のばらつきによるものです。