MACDとその理論

MACDは、Moving Average Convergence Divergence の頭文字をとったもので、翻訳すれば「移動平均収束発散」となります。
 ・MACD=短期EMA-長期EMA
 ・シグナル=MACDのx日移動平均
 ・オシレータ=MACD-シグナル
   前の値より大きいか小さいかで色を変えているものもあります。
MACD(12,26,9)と表現されたものは、MACD=12EMA-26EMA,シグナル=MACDの9移動平均となります。

MACDの傾向を説明するために、仮想データを作成しました。(下図)大きな波と小さな波が合成されて価格が推移するというイメージです。波はSINカーブで計算してEXCELでグラフ化しています。もちろん、こんなきれいなカーブになるはずもないですが、傾向を説明するための近似式と考えてください。

【MACDの特徴】
一番の特徴は、先行インジケータだということでしょうか。
まず、移動平均線とMACDとの違いをわかりやすく下に並べて図示します。
終わり値をDATAとしたときの21MAと75MAを表示しています。MAは遅効インジケータであり、価格変化よりも遅れて波形がなぞられていることがわかると思います。期間が長いほど、その遅れ具合が大きいとわかります。
※横軸は時間です。右にいくほど後の時間なので、黒い線(DATA)の形が緑線(21MA)は少し右側に,青い線(75MA)はもっと右側にズレて=遅れて形成されていることがわかると思います。

次に、MACDの波形を以下に示します。上の移動平均線と比べると明白で、DATAの大波よりもMACDの大波が先に(図の左側にシフトして)現れています。つまり、終わり値(DATA)が単純にサインカーブで上下する動きの場合に、MACDはDATAの動きを予測できる可能性があると言うことです。そういう意味ではとても優れたインディケータだと思います。

【計算期間による特徴】
どの期間のEMAで計算するか?一般的には(12,26,9)が使われるようですが、細かい動きを敏感に感じ取りたいときは(5,10,5)を使うこともあります。これを仮に、最短反応型としましょう。上と同じDATAを最短反応型で計算したのが下図です。大波は似たような傾向ですが細かい波について(DATAでも見えにくいSINカーブを)正しく抽出していることがわかります。逆に細かく反応しすぎて見づらい、という意見もあるでしょう。どちらを使うのが正しいというよりも、そこは好みで分かれるところだと思います。もちろん、両方使うのも良いでしょう。

【ダイバージェンスについて】

ダイバージェンスとは、価格が上昇しているのにシグナルが下げているといった逆行状態をいいます。下図のように、終わり値の山は上がっているのに、MACDの山は下がっているという状態です。
ダイバージェンスが発生する理由は、DATAが大波の頂上に着く前にMACDは大波頂上からの下げにきているため、(前述のように先行で傾向が発現するため)先行区間分の傾向差がダイバージェンスという逆行症状になるのです。この基本を忘れなければ、ばらつきに惑わされることなく判断できると思います。

なお、ダイバージェンスは山だけで見るわけでなく、MACDラインの流れでもみます。それは、小波が無いときには山ができないからです。下図は同じデータで左側が小波あり,右側が小波なしです。小波有りでダイバージェンスの見られる山-山間を小波なしでみると、ローソク足(終わり値線)が上昇方向に対してMACDラインは下降方向に向かっていることがわかると思います。この逆行現象がダイバージェンスですね。
このように、なぜダイバージェンスが発生したときにトレンド転換が発生しやすいか、その理論をしっかり理解しておくことで迷いなく判断しやすいと思います。”できる”でなく”し易い”と自信なさげな表現をしたのは、終わり値は必ずSINカーブの動きをするわけでなく、その動き自体はわからないからです。変化に対応するには経験が必要と思いますが、それでも基本や原理を知っておくことは経験の密度を高めてくれるものと思います。

【ダイバージェンスの落とし穴】
ダイバージェンスが発生すれば必ずトレンド転換するのか?相場はSINカーブの組み合わせで動いているわけではないので、不自然な変動は当然あるもので、全てをダイバージェンスにたよる訳にはいきません。ダイバージェンスが崩れる例を以下に示します。
まずは計算データを3種類の期間でそれぞれ以下に表示します。

当然ながら、期間の短いMACDのほうがローソク足の変化に対する反応が早くなります。以下の説明は、わかりやすいように期間の短い(5,10,5)の設定のもので説明していきます。

ローソク足が横ばいのときは、MACD=0になります。ローソク足の傾きが一定であれば、MACDは決まった値でサチります。グラフでは、まずローソク足は水平でMACDも0を推移,次にローソク足が上昇してMACDも上昇しました。高値でローソク足が水平に動くと、MACDは0に向かいます。0に到達すればそのまま0で推移します。ローソク足の下降によってMACDは下に向かい、一定の値(図の0.25)でサチります。ローソク足の傾きが一定のまま推移すると、MACDはそのβの位置でサチるということです。
ダイバージェンスは、MACDがローソク足の傾き値に到達するまでのタイムラグのタイミングでも発生します。とくに急騰急落が発生したあとにダイバージェンスが起きやすいイメージがあります。急騰してその後ゆっくり上昇しているような形は、またどこかで上昇する可能性があります。しかし、急騰で引き上げられたMACDは、ゆっくり上昇しているときに0の少し上(低いβ)に向かって下がるので、ダイバージェンスになります。

ダイバージェンスになる理由が、SINカーブの先行予測しているものなのか、急騰急落による乱れなのか、同じ価格で推移してしまったためなのか、この辺を正しく理解していないと、判断を誤る危険性があると思います。

【ヒドゥンダイバージェンス】
ダイバージェンスと対比してヒドゥンダイバージェンスもよく解説されています。ヒドゥン(hidden)とは、「隠された」という意味があるようですが、単純には見方の違いです。
ダイバージェンス:トレンド反転のサイン
 上昇時は山の上を見る,価格が上昇でMACDが下降なら、下落に反転
ヒドゥンダイバージェンス:トレンド継続のサイン
 上昇時は山の下を見る,価格が上昇でMACDが下降なら、上昇継続
さて、これを上述と同様にその発生メカニズムをシミュレーションしてみようとしたのですが、トレンドが続いているタイミングでは検証出来ませんでした。

いくつか試行錯誤して、ようやく再現できたのが下図です。この図は、MACDが先行で生じる頂上と、ローソク足の頂上との間のタイミング、その間で小波が多く発生するとき、ダイバージェンスが発生しながらヒドゥンダイバージェンスも発生している状態です。つまり、
①最初の小波でダイバージェンスが発生していてもローソクは頂上に届いてなく再度上げる小波がくることに注意する(0ラインを超えるまでは続く)
②そのままサインカーブの動きになれば、少なくとも頂上までは上昇する,逆に何らかの要因で下げずに上昇へと流れが変わる可能性もあり。。
①②のいずれにしろ上昇(トレンド継続)を示唆する、ということです。
ヒドゥンダイバージェンスは上昇の合図というよりは、ダイバージェンスが発生して将来的なサインカーブ反転が示唆されているときにゼロラインまでの距離が長く小波が多いときに現れて、少し先までは最低でも上げる、という認識でみたほうが良いと考えます。

【最短反応型MACDと21MA】
最短反応型MACDでは0よりも大きければ上昇トレンド、小さければ下降トレンドになります。下図のグラフをみると、その切り替わり点は丁度DATAと21MAとの交点になります。理論計算で検証出来ていませんが、経験的にこの切り替わり点が一致すると感じています。私は21MAのBREAKでトレンドの方向性を決めていますが、(21MAよりも上に来れば上昇トレンド、下にくれば下降トレンド)最短反応型MACDでも似たような判断ができると言えそうです。