正念場での自己暗示

まずは、私が十代のころから勝負哲学のバイブルとしていた「勝負」(升田幸三)からの抜粋です。

 私は自己暗示というのは、人生にとって非常に大事なことだと思ってる。たとえば自己暗示というのは、成功する人と不成功に終わる人との関係じゃないかと思ってるんです。
不成功に終わる人というのは、自己に無意識のうちに自信喪失させるような暗示をかけている。おれはもうダメとか、終わりだとか、終始ボヤいたりして、自分を奈落の底に落ちこませるような自己暗示をね。
逆に、伸びる人いうのは、いつも自分を向上させるような暗示をかけてますよ。ここに、わたしゃ別れ道があると思う。同じことでも、自信をつけるのと奈落の底へ落ちるように仕向けてるのとでは、これ、天地の差がありますよ。
これがまぁ、天質というのか、素質があったからそういうことを会得したというのか、とにかく、ここに一つの人生の分かれ道があると思います。頭の出来ぐあいなんというのは、人間、そう違ったものがあるわけじゃない。いくらいいからって、脳ミソが人の倍も三倍もあるわけじゃないし・・・。その、ちょっとしたことだと思いますよ。
私はもともと、人生というのは、一手違いだと考えているんです。将棋でいう一手の差で、もう勝敗がきまる。全局のことでも、また局部、局部のことでも、その一手の差を貴重に、そして最善をつくす人が、”勝ち”にゆくわけで、一手くらいなどといって、気楽にしとるやつが、結局は敗北につながる。
自己暗示というのは、そういう微妙な人生のアヤを乗り切るためにも、心の内側からささえてくれる、大切な要素だと思います。

私は昔、勝負哲学の大事なところだけをノートに転記していて、この部分も記録していました。いちおう大事な部分だと認識していたんですね。でも、それを十分に理解して実践していたかというと、疑問ありです。それなりに後ろ向きなことは考えないようにしているし、自分は天才だと勝手に信じてるし、そういう意味で実践している面はあるんですが、まだまだ不足していたように思えます。
最近勉強した本で、潜在意識に関する本が数冊あり、そのいずれも、上述と同じようなことを書いているんです。私が購入した本は、たとえば以下のものです。
「神メンタル」
「潜在意識をとことん使いこなす」
「潜在意識を書きかえる」
切り口はだいぶ違う面もありますが、升田幸三の自己暗示は、潜在意識の働きをなんとなく経験的に感じ取って、その感性で言われていたんだと、いまさらながらそのすごさを感じ取る次第です。
私は、勝負哲学をわかっているようでわかっていなかった。知っているだけではモノにならない。自分が同じ体感をするには、同じ感想をもつくらいの実践をしないと全然追いつけない。社会人になって勝負の世界とは違う世界に生きなければならなくなり、少し縁遠くなったとはいえ、普遍的に共通するところはあったはず。読み直して、考え直して、反省する次第です。